コンテンツ
- 就業ゴールドカード
- 就業ゴールドカードとは?
- 就業ゴールドカードのメリット
- 特定の雇用主(スポンサー)を必要としない、労働許可です。
- 所得税減免措置
- 最長滞在期間1年の親族ビザ
- 配偶者と子女の居住許可(Residence Visa)
- 国民健康保険(6ヶ月の滞在義務の対象外)
- その他
- 「就業ゴールドカード」申請要件
- 申請の流れ
- STEP1:オンライン申請
- アカウント登録と基本情報の入力
- 台湾就業ゴールドカードの有効期限
- 台湾就業ゴールドカードの受け取り場所
- 台湾就業ゴールドカードの審査日数
- 居住先
- 申請分野の選択
- 申請料金の支払い
- 審査の開始
- 追加書類の要求、あるいは、不許可について
- 「台湾地区無戸籍国民」とは何か?
- STEP2:在外公館で本人とパスポートの照合(パスポートチェック)
- 台北駐日経済文化代表処にて行う本人確認の必要書類
- ゴールドカードの受け取りと台湾入境
- よくある質問
- 行政書士横山のまとめ
- 関連サイト
就業ゴールドカード
台湾・国家発展委員会は、2018年2月から「外国専業人材延攬及雇用法(外国籍専門人材の誘致及び雇用に関する法律)」を施行し、「就業ゴールドカード」の発行を開始しました。
これは、台湾の各分野が必要とする特定の外国人スペシャリスト(高度人材)を対象に発行されるもので、4つの機能(1. 労働許可、2. 居留ビザ、3. 外国人居留証、4.再入国許可)が一つにまとまっているカードです。
世界各地から台湾に関心を寄せる優秀な人材を誘致し、台湾で就職、投資、生活させるのに役立っています。2021年6月には、改正外国籍専門人材の誘致及び雇用に関する法律が可決成立し、より魅力的な労働・居住条件が提供され、税金、社会保障、その他の関連権利が最適化され、より多くの国際的な人材を採用・確保するため制度が拡充されました。
ここでは、出入国管理の専門家である行政書士の横山が、台湾の就業ゴールドカードについて解説していきます。
就業ゴールドカードとは?
台湾で外国人が就労するためには、通常は、労働許可(就業許可)、居留ビザ、外国人居留証(外僑居留証)、さらに再入国許可をそれぞれ個別に、別々の窓口で、申請しなければなりません。
しかしながら、「就業ゴールドカード」を取得すれば、これら4つの申請を一つの申請、一つの窓口で行うことができ、外国人の利便性が大きく高まりました。
- 労働許可(Work Permit):台湾の雇用主のためにフルタイム、パートタイム、フリーランスで合法的に働く許可
- 居住許可(Residence Visa):台湾に最長3年間滞在できる長期ビザ。
- 外僑居留証(外国人居留証):台湾での日常生活で使用するID番号のついた物理的なカード。
- 再入国許可(Re-entry Permit):台湾への出入国は無制限(コロナによる出入国制限を受けません)。
また、就業許可の申請では、まず外国人は雇用先(スポンサー)を確保しなければならず、雇用先の会社の協力があってはじめて申請できるようになります。これを確保してようやく居留ビザの申請をすることができ、台湾に滞在することが可能になるのです。もしも、雇用先の会社を辞めて転職する場合には、新しい雇用先の会社に協力してもらって、再度就業許可の手続きを行うことになります。
一方、「就業ゴールドカード」を取得すれば、スポンサー会社を確保しなくとも、自由に就職活動を行い、いつでも就職でき、合法的にアルバイトもでき、転職も制限なく自由にできるようになります。
就業ゴールドカードのメリット
特定の雇用主(スポンサー)を必要としない、労働許可です。
就業ゴールドカードは、外国人個人に対し、特定の雇用主を前提とせず、申請も不要な無期限の個人の労働許可を提供するものです。台湾で起業でき、投資家、コンサルタント、個人事業主、リモートワーク、または複数の会社に雇用されることもできます。
所得税減免措置
外国籍専門人材の誘致及び雇用に関する法律 第9条に基づき、一定の条件のもとで、所得税減免措置を受けることができます。具体的には、居留期間183日以上と給与所得300万台湾ドル超を満たした初年度から3年以内を期限として、各課税年度の300万台湾ドルを超えた分の所得の半分が免税となります。
最長滞在期間1年の親族ビザ
外国籍専門人材の誘致及び雇用に関する法律 第13条に基づき、「就業ゴールドカード」を持つ外国人の直系尊属は、最長6ヶ月の滞在期間を持つ1年間のマルチビザを申請することができ、都度延長することができます。
配偶者と子女の居住許可(Residence Visa)
「就業ゴールドカード」を持つ外国人の配偶者と子供(未成年)も、家族滞在ビザを申請し、台湾に居住することができます。
国民健康保険(6ヶ月の滞在義務の対象外)
台湾の会社に雇用される場合、本人も扶養家族もともに、台湾の国民健康保険制度に加入できます。
経営者や個人事業主の場合は、6か月の待期期間なしに、本人も扶養家族もともに、台湾の国民健康保険制度に加入できます。従来、外国人の配偶者や子は、台湾で6か月以上滞在してから健康保険に加入することができました。
その他
有効期間は1~3年とし、期間満了後に再申請できます。
申請費用は、台湾内からの申請か、台湾外からの申請や、有効期間により異なりますが、台湾外からの新規申請で、アメリカ国籍以外の場合、1年有効のカードが3,700台湾ドル、2年有効が4,700台湾ドル、3年有効が5,700台湾ドルとなっています(2021年12月1日現在)。
続いて、「就業ゴールドカード」を申請するための要件についてみていきます。
「就業ゴールドカード」申請要件
外国籍専門人材の誘致及び雇用に関する法律に定める「外国専業人材」とは、次の2種類になります。
- 「就業服務法第46条1項1号乃至6号」の職業に従事する者
- 専門知識又は技術を有する、「補習教育法」に基づく公認を受けた短期補習塾の講師
合計すると、上図のとおり、9つの分野のうちで国家的に認められたスペシャリストとして、申請者は基準を満たしていく必要があります。
9つの分野とは、経済、金融、文化芸術、建築設計、国防、スポーツ、法律、ハイテク(科学技術)、教育の分野に分かれます。その9つに該当しない分野の職業(専門)の方は、残念ながら申請することができません。それぞれ分野ごとに、その申請条件も変わります。
現在のところ、経済分野が最も多く、次いでハイテク分野で多く認定を受けています。
要件の一つとして、直近の月収が16万台湾ドル(約66万円相当)以上の給与水準であることがあります。その場合、直近3年間の納税証明書、個人の履歴書及び所属会社の在職証明書、会社案内などの提出が求められます。
個人事業主の方はご注意ください。台湾の国家発展委員会の説明によると、事業所得は、個人事業の運営による所得であり、専門家として認められる個人への給与所得には該当しないとしています。また、在職証明書には、実際の雇用期間及び遂行した職務内容が記載されているもので、発行機関の押印と発行者の署名が必要になります。
詳しい要件の確認は、下記のサイトから確認できます。
申請の流れ
全体の流れは、1、書類申請(オンライン)、2、本人確認(領事部・在外公館にて)の二つに大きく分かれます。
STEP1:オンライン申請
まず、就業ゴールドカードの申請は、こちらからオンラインで行います。
アカウント登録と基本情報の入力
オンライン申請プラットフォームのサイトにアクセスし、アカウントを作成します。
サイトから個人情報など必要事項を入力します。記入した情報はいつでも保存でき、後で戻ってきて、提出する前に変更することができますので、何日かかけて申請内容を入力するとよいでしょう。
英語名は、台湾入国時に使用するパスポートの名前と一致させる必要があります。申請時にアップロードするパスポートのコピーは、ビザ申請時に使用したパスポートと同じものである必要があります。
まず、あなたの国籍と、台湾から申請するのか海外から申請するのかを選択します。
あなたの国籍については、あなたが、外国のパスポート所持者、または台湾地区無戸籍国民で中華民国(ROC)パスポート所持者(National without household registration (NWOHR))であれば、申請することができます。
台湾就業ゴールドカードの有効期限
台湾就業ゴールドカードの有効期限を選択します。1年、2年、3年の3種類の中から、申請者の希望に合わせて選択できます。ただし、有効期間によって、申請料金が異なります。有効期限後に延長する場合は、再度申請が必要になりますので、せっかくなので、長い有効期間を選択されることをお勧めします。
台湾就業ゴールドカードの受け取り場所
台湾就業ゴールドカードの受け取りを希望する場所を選択します。日本を含む海外にいる場合は、最寄りの台湾の在外公館を選択します。しかし、2021年7月28日以降、ゴールドカードの受け取り場所は台湾内に限定され、在外公館での受け取りはできなくなっているとのことです。日本からの申請者は、申請ポータルから「居留証」をダウンロードし、台湾に入境することができます。ゴールドカードは台湾入境後30日以内に移民局で受け取ります。
台湾就業ゴールドカードの審査日数
現在、コロナの影響により、申請が急増しているとのことで、審査に最長で60日かかりるとのことです(書類の追加提出が必要な場合はさらに日数がかかります)。
居住先
現時点で台湾の勤務先の住所がない場合は、申請・審査段階で一時的に空欄にしておくことができます。台湾の居住地がない場合も、台湾の親族・友人の居住地を設定することができますが、台湾に入境後30日以内に居住地の住所を提供する必要があります。
申請分野の選択
申請する分野(フィールド)を選択し、関連するすべての添付書類を、オンラインでアップロードします。申請後、業種を変更することはできないと覚悟してください。間違えのないよう、分野を選んでください。また、英語または中国語で作成されていない書類は、英語または中国語への翻訳が必要です。
申請料金の支払い
オンライン申請が完了すると、システムから12桁の申請番号が記載されたメールが送信されます。この申請番号は、必ずメモして保管しておいてください。
アカウントとパスワードを使って、再度サイトにログインし、オンライン決済のタブから入ります。
表示された内容に従って、申請料金をクレジットカードで支払います。台湾外にいる場合、クレジットカード以外の支払い方法は認められていません。サイトにログインし、申請状況照会をクリックし、12桁の申請番号を入力すると、申請状況を確認することができます。申請料金は、結果にかかわらず返却されません。
審査の開始
オンライン決済完了後、正式に審査が開始されます。台湾就業ゴールドカードは、4つの機能を組み合わせたものですので、政府の異なる部門が審査します。移民局が審査の第一段階を行い、その後、労働省に引き継がれます。ここで関係省庁との協議や申請内容の確認が行われます。最後に領事局において、VISAの最終審査が行われます。
追加書類の要求、あるいは、不許可について
提出した情報が不完全または不正確な場合、または審査当局があなたの資格についてより多くの情報を必要とする場合、審査のために追加の書類を提出する必要があります。これを怠ると、申請が拒絶される場合がありますので、追加書類の提出は迅速に行ってください。情報の変更や補足書類の提出が必要な場合、30日間の猶予が与えられます。
なお、申請が不許可(拒絶)となった場合でも、当局はその理由を開示する義務はありません。
情報に不備がある場合というのは、次のケースです。
- 申請資格の裏付けとなる書類がない場合。書類の不備(例:公的な納税証明書を提出していない等)
- 書類が英語または中国語でない場合
- 特定の国・地域の書類で、認証(公証)がされていない場合
「台湾地区無戸籍国民」とは何か?
「無戶籍國民」とは、中華民国の自由地区(=台湾、澎湖、金門、馬祖地区)の戸籍を持たない、中華民国(ROC)国民を指します。例えば、日本など、中華民国(台湾)の外で出生した方で、戸籍登記を行わなかった場合、このような身分になります。
中華民国国民は、中華民国憲法第3条により規定されていますが、台湾地区の国民以外にも、海外華人及び中国大陸、香港・マカオ市民も等しく中華民国の国民とするという認識であるため、海外に居住する華僑は、国民ではありながら、さらに台湾の出入国管理法性により、台湾地区の戸籍を持つ者と持たぬ者に分類され、台湾地区内の居住の自由を有する者と有さない者に区分されています。
「無戶籍國民」であっても、中華民国ROCの国籍を有していますので、パスポート(護照)が発給されます。外観は、有戸籍国民のパスポートと相違ありません。
しかし、「無戶籍國民」の中華民国ROCパスポートは、ビザ無し渡航できる国・地域のメリットがほぼなく、オーストラリアビザなどその都度ビザを取得する必要がある国がほとんどです。
余談ですが、「無戶籍國民」の中華民国ROCパスポートをお持ちの方が、台湾地区に渡航する場合、3ヶ月の短期間であっても、簡便な入国許可申請(在臺無戶籍國民申請短期入出國許可)が必要となり、成年で長期渡航の場合はさらに多くの書類を用意して申請する必要があります。
STEP2:在外公館で本人とパスポートの照合(パスポートチェック)
海外からの申請の場合、申請はオンラインで完結しますが、審査が進むと、審査部署よりメール等で日本にある台北駐日経済文化代表処など台湾の在外公館に赴き、本人確認とパスポートチェックをするよう指示があります。
これは、オンライン申請が承認され、書類審査に合格したということを示しています。パスポートを持参してパスポート検査を受けるよう電子メールで通知されますので、代表処にご予約の上、パスポート原本をはじめとする、下記の書類をお持ちいただき、本人確認を進めてください。
パスポートチェックが完了後、台湾就業ゴールドカード申請が承認された旨のメールが届きます。通常の場合、この手続きは1週間ほどで完了します。
台北駐日経済文化代表処にて行う本人確認の必要書類
- 「繳驗護照通知單」(Passport Submission Notice)
- パスポート原本およびコピー
- 渡航用の新型コロナワクチン接種証明書(市区町村発行)
- 自分の名前が載っている特別入国許可者リストの公文書のコピーまたは公文書番号
ゴールドカードの受け取りと台湾入境
台湾入境前にゴールドカードが受け取れない場合、サイトのダウンロードから、「境外核准證明(Republic of China Employment Gold Card Overseas Approval Certificate)」(下図参照)をプリントアウトしてください。この証明書を持って台湾に入境します。
台湾に入境後30日以内に、この証明書とパスポート原本を指定の国家移民局に持参し、ゴールドカードを受け取りに行きます。
境外核准證明のダウンロードには期限がありませんので、ゴールドカードの有効期限内であれば、いつでもこの証明書を持って台湾に入境することができます。
よくある質問
- オンライン以外の申請方法はありますか?
- オンライン申請のみとなっています。書面での申請はできません。
- 資料の認証(公証)は必要ですか?
- 以下の国・地域の資料(書類)は、海外にある台湾の在外公館で認証を経る必要があります。
中国(大陸)、アフガニスタン、アルジェリア、ベンガル、ブータン、ミャンマー、カンボジア、カメルーン、キューバ、ガーナ、イラン、イラク、ラオス、ネパール、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン、セネガル、ソマリア、スリランカ、シリア、フィリピン、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア(日本の資料は含まれません)
- 就業ゴールドカードの申請状況を確認するにはどうすればよいですか?
- オンライン申請サイトにログインしていただくか、メールをご確認ください。日本にある台北駐日経済文化代表処では、必要書類や審査状況などはわからないとのことでご注意ください。
- 就業ゴールドカード所持者の家族の呼び寄せはどうすればよいですか?
- 配偶者又は20歳未満の子女を呼び寄せる場合は、必要書類を集めて、日本にある台北駐日経済文化代表処などで家族居住ビザ(依親居留簽證)を申請します。
- 海外から申請した場合、どのようにして台湾に入境するのですか?
- 申請サイトから「境外核准證明(Republic of China Employment Gold Card Overseas Approval Certificate)」を印刷してください。この証明書をもって、台湾に入境することができます。
- 就業ゴールドカードに申請することができない者はいますか?
- 中国籍(大陸)の国民、中華民国籍で台湾に戸籍のある方は、お申込みできません。
- 中国(大陸)生まれですが、申請できませんか?
- 中国(大陸)生まれでも、中国籍(大陸)以外であれば、申請できます。ただし、特に次の要件を満たす必要があります。4年以上外国(中国大陸以外)に滞在したことを証明するためにパスポートの全頁を提示します。中国、マカオ、香港での過去の滞在歴は、直近4年間で30日以内であることが必要で、それを疎明する入国リストをパスポートのページと一緒に作成します(日付と入国スタンプ双方の記録が必要です)。さらに、中国本土で出生した香港・マカオの申請者は、財團法人海峽交流基金會(SEF)により証明された中国本土での非戸籍証明書、香港・マカオ居住者の本土旅行許可証(回郷証)、SEFによって証明された中国本土の戸籍抹消の公証書のうちいずれかを提出する必要があります。
行政書士横山のまとめ
以上のように、日本の高度専門職の制度と比較した場合、台湾の「就業ゴールドカード」のメリットは、特定の就職先がない場合でも、取得できるという点です。私は、日本のビザ申請を数多く取り扱っており、海外のお客様からも多数お問い合わせを受けていますが、日本の場合、特定の就職先が決まっていない場合は、高度人材のビザを申請することができません。使い勝手と申請のしやすさで、台湾に軍配が上がるでしょう。
また、来台後も、必ずしも固定の雇用先を見つける必要はなく、フリーエージェントのような働き方で居住できるというのは、スモールビジネスから開始したいという起業家にとってもメリットは大きいでしょう。
また、課税優遇措置というもの、日本には見られない制度で、メリットがあるのではないでしょうか。
そして、申請者のハードルも、高嶺の花というほどではなく、手が届く範囲内であるといえます。もちろん、スポーツや芸術分野で想定しているのは、特定のトップアスリート、アーティストかと思いますが、実際にゴールドカード許可者の約60%が経済分野となっており、その条件は、平均月収16万台湾ドル(約66万円)以上が過去3年間継続していることですので、普通の会社員でも、「無理ゲー」とまでは言えませんよね。
単純に比較はできませんが、マレーシアのMM2Hの場合は、2021年から要件のハードルが大幅に上がりました。月給要件が、4万リンギット(約100万円)以上となったことと比較するとよいでしょう。