特に「台湾地区無戶籍國民」の場合

中華民国 ROC(台湾)のパスポートをお持ちで、日本で生活している方が、オーストラリアに行く場合、

どのようなビザを取得すればよいのでしょうか?

ビザ専門行政書士が解説します。

[Australia Visa] 在日外国人のためのオーストラリア観光ビザ

オーストラリアのビザの種類はたくさんありますが、観光や親族訪問、短期の出張や語学研修の目的で、

オーストラリアを訪問する場合は、次の3つのビザのうち、一つを取得することになります。

  1. Visitor visa (subclass 600) :訪問ビザ
  2. Electronic Travel Authority (subclass 601) :いわゆるETA電子ビザ
  3. eVisitor (subclass 651):電子ビザ

(1) Visitor visa (subclass 600) :訪問ビザ

一般的な訪問ビザになります。こちらの申請方法については、下記、参照ページからご確認ください。

ビザ発給まで約1週間~2週間かかり、

必要書類もかなりの数を用意する必要があります。

こちらは、オンラインで申請できます。

(2) Electronic Travel Authority (subclass 601) :いわゆるETA電子ビザ

ETAビザは、審査時間も最長で1日と短く、必要書類も少なくて済みます。

日本国籍の方は、2番のETAが使えます。

そして、日本で居住する台湾パスポートの所持者であって、

パスポート上に台湾の身分証番号(身分證統一編號/Personal ID number)が記載されている場合も、

こちらのETAが申請できます。

つまり、「台湾地区有戸籍国民」の方(=台湾地区の戸籍を持っている)場合に限ります。

ただし、申請方法は、日本国籍の方のように、オンラインや旅行会社を通じての申請はできません。

パスポートコピーと、記入済みの申請書(ETA additional information form)を

Australian Immigration Enquiry Formから、送付して申請します。

なお、下記のパスポートを持ちの方は、オンラインで申請できます。

  • 日本
  • 香港 (SAR of China)
  • シンガポール
  • 韓国
  • 米国 など

申請費用は、システム利用手数料の20オーストラリアドルです。

(3) eVisitor (subclass 651):電子ビザ

こちらのビザが申請できるのは、主に欧州のパスポートをお持ちの方になります。

ではどうすればよいか?

以上の結果から、

身分証番号付きの中華民国ROCパスポートを持っている場合(台湾地区有戸籍国民):(2) Electronic Travel Authority (subclass 601) 

身分証番号無しの中華民国ROCパスポートを持っている場合(台湾地区無戸籍国民=台湾地区の戸籍を持っていない):(1) Visitor visa (subclass 600) 

を申請していくことになるでしょう。

「台湾地区無戸籍国民」とは何か?

「無戶籍國民」とは、中華民国の自由地区(=台湾をはじめ、澎湖、金門、馬祖地区。要するに、「台湾」の政府が実効支配している地区)の戸籍を持たない、中華民国(ROC)国民を指します。例えば、日本など、中華民国(台湾)の外で出生した方で、戸籍登記を行わなかった場合、このような身分になります。

中華民国国民は、中華民国憲法第3条により規定されていますが、台湾などの自由地区の国民以外にも、海外華人及び中国大陸、香港・マカオ市民も等しく中華民国の国民とするという認識となります。これは、「中国」は一つであるという前提からの帰結です。中華民国にとっては、中国大陸も、中華民国大陸地区ということになります。このため、海外に居住する華僑は、国民ではありながら、さらに台湾の出入国管理法性により、台湾地区の戸籍を持つ者と持たぬ者に分類され、台湾地区内の居住の自由を有する者と有さない者に区分されています。

「無戶籍國民」であっても、中華民国ROCの国籍を有していますので、パスポート(護照)が発給されます。外観は、有戸籍国民のパスポートと相違ありません。かつては、無戸籍国民が持っているパスポートは、Xの番号から始まるというルールがあったために、Xパスポートと呼ばれたようですが、現在のパスポート番号は、この通りではありません。

しかし、「無戶籍國民」の中華民国ROCパスポートは、ビザ無し渡航できる国・地域のメリットがほぼなく、上記のオーストラリアビザの例のとおり、その都度ビザを取得する必要がある国がほとんどです。

余談ですが、「無戶籍國民」の中華民国ROCパスポートをお持ちの方が、台湾地区に渡航する場合、3ヶ月の短期間であっても、台北駐日経済文化代表処他、当局の領事館にて、入国許可申請(中華民國臺灣地區入國許可證)が必要となります。中華民国のパスポートを持っているのにも関わらず、台湾(≒中華民国)に入国できないというのは、日本人からするととても不思議に思われますが、英国も同じようなケースがあります。香港人は、現在も英国パスポートを持っている方も多いですが、香港人が持っている英国パスポート(BNO)は、いわゆる英国出身の英国人とは異なり、パスポートだけで英国に住むことができない仕組みになっています。話を元に戻すと、中華民国「無戶籍國民」が、成年で長期渡航の場合はさらに多くの書類を用意して領事館で申請する必要があります。台湾に自由に居住・就労できず、台湾の社会医療サービスも享受できず、おそらく外交的保護も受けられませんが、(これはメリットと言ってよいかわかりませんが)兵役の対象外となります。

なお、台湾地区無戸籍の中華民国ROCパスポートを持っている方は、日本滞在(観光)でも、ビザなし渡航は認められません。これも、いわゆる台湾人の場合と、待遇が異なりますので、注意が必要ですが、日本在住のこれらの方は、日本の永住者もしくは特別永住者であり、在留資格の問題がない方々が多いので、トラブルになるケースが少ないでしょう。トラブルになるとしたら、海外(日本以外)にいる場合で、再入国許可期限が切れて、在留資格を失ったときでしょう。居住地に安定した居住権(永住権)や市民権を持っていればまだよいですが、本国に身寄りや帰るところがない方にとっては、本当に怖いケースです。

類似のケースとしては、インドシナ難民出身のベトナム人の方で、ベトナムパスポートを持っておらず、代わりのトラベルドキュメントとして、「再入国許可書」(再入国許可証のシールとは異なります)を持っている方も、ベトナムに渡航するためには、ベトナムビザの申請が必要です。

このため、「無戶籍國民」の中華民国ROCパスポートをお持ちの方は、ビザ取得が必要か否かについて、事前に必ず確認してください。

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