「再入国許可書」とは、パスポートを取得することができない場合、または、その外国人の所持する再入国許可書の査証間に余白がない場合に、出入国在留管理局から交付される準パスポートのような冊子型のトラベルドキュメントです。
パスポートに貼られるシールタイプのQRコードがある「再入国許可」とは異なるものです。再入国許可「書」であって、再入国許可「証」ではありません。
国籍国のパスポートを取得することができないことに特段の理由が認められない者については、パスポートを取得するよう指導されるため、交付されません。
また、再入国許可書を発行したものの、一度も出国しなかったといった場合、更新時にトラブルになる恐れもあります。
再入国許可書の記載事項は、次の通りです。
- 再入国許可の証印
- 氏名
- 国籍・地域
- 在留資格
- 写真
主に、「朝鮮」籍の方が所有しているケースが多いです。
または、インドシナ難民出身者で、ベトナム、ミャンマーなどの大使館・領事館からパスポートが発行されない方も、この再入国許可書を持っているケースがあります。
そして、「無国籍」の方で、日本に住んでいる人も、これを持っていることでしょう。在留カードに「無国籍」と書いてある方は、非常に限られますが、いることはいます。
再入国許可書は、本来、日本への再入国を担保する書類ですので、パスポートのように海外への渡航文書としての効力はありません。
しかしながら、事実上、旅行証明書(Travel Document)の役割を果たしており、日本在住者が、日本以外の海外に渡航する際に、パスポートの代わりとして使用します。
日本に再入国するための「再入国許可」の証印が押されていますので、これに加えて、さらに渡航先のビザ(査証)を取得することで、日本以外の海外に渡航することが可能となります。
ビザ無しで渡航できる国であっても、別途、ビザを取得する必要があります。
アメリカのビザも、許可されたら、この「再入国許可書」にビザシールを貼ってもらえます。パスポートと同じみたいですね。
ただし、パスポートに準ずる機能を有しているものの、認知度が低く、パスポートの代わりと認められない可能性もあります。
少なくとも、一般的に知られていませんので、さまざまなケースで、パスポートを出してくれと求められてしまい、その度にいちから説明をしなければなりません。
このため、渡航先国によっては、ビザが取得できなかったり、取得できたとしても、ビザ申請に膨大な書類が必要になり、一般のパスポートを使用したビザ申請と比べて、はるかに審査時間がかかる、条件も悪い、など、不便な点が多くなります
そして、ビザを扱っているエージェントからも、パスポートがないから申請できないからと断られたり、申請方法がわからないと回答されたりするのではないでしょうか。
または、日本生まれで、永住者でもあるのに、何故日本国に帰化しないのですか?とやんわりと言われてしまったかもしれませんね。
事実上の「無国籍者」として生きていくことは、普段日本にいる間には、特段不便はないと思いますが、ひとたび海外旅行・出張というケースになると、問題や不便さが顕在化します。
そして、途方に暮れるか、少し調べたか、誰かに聞いてみて無理だとあきらめてしまったのではないでしょうか。
そのような方を少なからず見ています。
でも、あきらめないで下さい。
パスポートがなくても、海外のビザ申請はできます。当事務所の実績をご紹介します。
再入国許可書で、日本から海外に渡航できますか?
- 海外渡航を考えているのですが、国籍国の事情により有効な旅券を取得できない場合、再入国許可を受けることはできますか。
- 再入国許可を希望する方が有効な旅券を所持していない場合であって、国籍を有していないため又はその他の事由で旅券を取得することができない場合は、再入国許可書の交付を受けることにより再入国許可を受けることができます。なお、再入国許可書を渡航先の国・地域への入国に際して有効な渡航文書として認めるか否かは、渡航先の国・地域の判断となります。(出入国在留管理庁のホームページ出典)
ベトナム国籍の方で、ベトナムのパスポートを持っていなくて、「再入国許可書」を持って、ベトナム国のビザを申請して、ベトナムに渡航した方も、よくいらっしゃいます。(しかし、当事務所は、ベトナムビザの代行申請はやっていません。)
中華民国の方は、台湾政府から中華民国(台湾)のパスポートが発給されますが、台湾の戸籍(シチズンシップと言い換えられると思います)を有していないので、やはり中華民国の居留許可を取得しなければならないという話も聞いています。
中国(大陸)の方は、中国政府から発行される「旅行証」というパスポートのような冊子があることをご存じかもしれません。以前は、日本での帰化許可申請中は、中国のパスポートが失効してしまい、「旅行証」で出国するしかなかったのですが、現在は、帰化が許可された時点で中国パスポートが失効となるように運用が変わったため、「旅行証」を取得するケースも減りました。「旅行証」を持っているのは、中国人と日本人のハーフのお子さんのケースかもしれません。
自分の国籍国に行くのに、何故ビザが必要になるのか、と思いますが、手続き上そのようなケースが生じることはあります。とてもややこしいですね。
ちなみに、アメリカビザ申請時には、朝鮮籍と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)籍と区別するため、「無国籍者」として申請できますが、オーストラリアビザ申請時には、無国籍者としての申請、または、朝鮮(Chosun)としての申請ができないため、「North Korea」として申請するしか方法はないかと考えますが、「South Korea」として申請するという方法も検討できるでしょう。韓国のパスポートを持っていれば、オーストラリアビザ申請はとても簡単ですが、韓国パスポートがない方は、「再入国許可書」をもってビザ申請することになるでしょう。
一方で、2024年には、このようなニュースも耳にしました。日本在住のミャンマー人の家族が、「再入国許可書」でタイに渡航しようとしたところ、日本の空港のエアラインカウンターで搭乗を断られてしまい、飛行機に搭乗できなかった(もちろんタイ旅行も断念した)という事案です。この家族は、当然、再入国許可書だけでなく、タイ王国のビザも事前に取得していたとのことです。エアラインカウンターからタイ入管に問い合わせて、パスポート無しでは入国できないという回答があり、搭乗拒否されたとのことです。どのようなやりとりがあったのか真偽のほどは不明ですが、ビザ取得後も、エアラインに事前に確認し、搭乗できることの確約を取っておくなどの対応が必要だと言える、残念な事案です。
私は、パスポートを持っていません。再入国許可書で、オーストラリアビザは申請できますか?
結論から言えば、パスポートがない日本在住の永住者の方であっても、「再入国許可書」の冊子を持っている方は、オーストラリアビザの申請ができます。
しかし、オンライン申請で、いざ、パスポート番号無しで申請しようとすると、または、再入国許可書の番号を代わりに入力しようとすると、システム上はねられてしまうという不具合が生じるかもしれません。
パスポートは、あらゆる国のビザ申請のために、必須の資料です。
また、国籍は、何と書けばよいのでしょうか? 在留カードと同じ国名でしょうか?
パスポート所持国と、シチズンシップ(citizenship)がある国と、厳密に分けて申請していきます。
一般的な外国人にとって、パスポート国=シチズンシップ国 なのですが、このように歴史的経緯のある国においては、イコールで結ばれない場合があります。
かといって、日本の永住者だから、日本にシチズンシップがある、ということにはならないので注意です。
パスポートがなくてオンライン申請ができない場合、オーストラリア当局に連絡し、例外的な方法で、ビザ申請を受け付けてもらう必要があります。
その時には、あなたは何故パスポートを持っていないのか、歴史的な経緯を踏まえて、当局に説明した方が良いです。
あなたにとっては自然なことなのですが、パスポートを持っていない(パスポートを取得できない)外国人が日本国内にいるということは、まだ知られていないですし、
さらに、オーストラリアのビザ審査官にとっては、当然ですが、なおさら知りません。
ここに、オーストラリアビザ審査官に対し、あなたの状況を説明する経緯説明レターをご紹介します。インドシナ難民のケースを想定しています。(もちろん、日本語ではなく、英語で説明必要です。)
ご参照ください。
オーストラリアビザ担当審査官 殿
私のケースをフォローしていただきありがとうございます。私のこのケースにはいくつかの歴史的背景がありますので、ご説明させてください。
1975年、ベトナム戦争末期にベトナムを含む、インドシナ3国は社会主義体制に移行しました。新体制下での迫害を恐れたインドシナ半島の人々144万人が難民となり、そのうち130万人がアジアの難民キャンプを経由したり、船で移動したりして、米国、オーストラリア、カナダ、日本などの国々へ移住しました。私たちの両親も、このインドシナ難民の一人でした。日本国は、2005年までインドシナ難民の受け入れを継続し、1979年から2005年までの間に、日本が受け入れた難民の総数は11,319人に上ると言われています。
私は、日本に定住したインドシナ難民の両親の子供として、日本で出生しました。そのため、私は、ベトナム社会主義共和国の国籍を有しておらず、同国のパスポートを取得することができません。
しかしながら、私は、日本国の永住者として日本での安定した生活が保障されており、パスポートに代わるものとして日本政府発行の「再入国許可書」を所持しています。このトラベルドキュメントがあれば、オーストラリアを含む海外に旅行した後、日本に問題なく戻ることができます。
どうか、私に対し、オーストラリア観光ビザを発給いただけますよう、お願い申し上げます。
当事務所に、オーストラリアビザの申請をお申し込みいただければ、このような煩雑で、かつ、英文による説明も必要なビザ申請手続きを、あなたに代わって行います。
他のエージェントに相談したが、断られてしまった方も、
当事務所に是非ご相談ください。
Email: info@lawoffice-yokoyama.com